帯状疱疹を取り巻く変化とは

その変化とは

水ぼうそう(水痘)が2014年10月1日より定期予防接種対象疾患に組み込まれたことです。

水痘ワクチンは、2回接種することで90%超の発症予防効果が期待できると言われていますし、ワクチンを接種することで、発症した場合にもごく軽い症状で済みます(重症化予防効果)。

定期接種化以降、当院を水ぼうそうで受診するお子さんは非常に少なくなりました。

また、水ぼうそうと診断された場合でも、以前のように全身に派手な水疱が多発するような例は少なく、水疱がすこし出る程度の軽症がほとんどです。

これは大変喜ばしいことなのですが、一方で、若い帯状疱疹の患者さんが増えている理由のひとつになっているとも考えられています。

水痘ワクチンの普及がもたらしたもの

一度水ぼうそうにかかると、水ぼうそうのウイルスは身体の中の『神経節』に残ります。完全には排除されないため、疲労やストレスで免疫系が十分に働けなくなったときに、水ぼうそうウイルスが再活性化することがあり、神経に沿って痛みや発疹が出現します。これが「帯状疱疹」です。

それではなぜ、水ぼうそうにかかる子どもが減ると、若年齢層の帯状疱疹が増えるのでしょうか?

全身に水疱ができるような水ぼうそうにかかると、その患者さんからは大量のウイルスが周囲に撒き散らされます。既に感染した経験のあるひとがこのウイルスに接すると、そのひとの免疫系が「あ、コイツ前に退治したことある!」と目を覚まします。【ウイルスを抑えつける方法を復習する感じ】と言ったら分かりやすいかもしれません。

予防接種が定期化されていないときは、この様な機会が多く存在していたはずです。特に、保育園、幼稚園、小学校で集団生活を送る年齢のお子さんであれば、同じクラスの子が水ぼうそうを発症し、ウイルスに暴露される機会が毎年のようにあったでしょう。また、その年代のお子さんが家庭にいれば、お子さんが発症したり、暴露されたウイルスを持ち帰ったりすることもあったでしょう。

水ぼうそうのウイルスに接する機会が多ければ、それだけ免疫系が【復習】することになるので、体内に潜んでいる水ぼうそうウイルスもしっかり抑えつけてくれる訳です。

水痘ワクチンが定期接種化され、世間で水ぼうそうのウイルスに触れる機会が減ると、免疫系が【復習】する機会も当然ながら減ります。復習不足の免疫系は、体内で水ぼうそうウイルスが暴走した際、即座に鎮圧することができず、帯状疱疹を発症するに至ってしまうのです。

幼小児に対するワクチンが定期接種化され、重症や、跡が残ってしまうようなひどい水疱の患者さんが減るのは本当に良いことです。一方で、このような側面があることを知っておき、一般の方でも帯状疱疹の初期症状を知っておいて「あれ?」と思ったらすぐに病院で相談するのも大事です。

そしてより大事なのは、専門科に関わらず医者側が、知識をアップデートしておくことでしょうね。

「帯状疱疹なんて年寄りの病気。若い人が罹るわけない。」

という思い込みで、せっかく受診した患者さんの典型的な症状を見逃したら、気の毒すぎます。私自身、心して臨もうと思います。

帯状疱疹ワクチンを打った方がいいひと

私のクリニックでは帯状疱疹ワクチンの接種を実施していませんが、テレビCMなどの影響か、しばしば患者さんから

「帯状疱疹ワクチン、打った方がいいですか?」

と質問されます。

過去に水ぼうそうにかかったことのある人は皆、帯状疱疹を発症する可能性があります。

そして、先だって述べた通り、水ぼうそうのウイルスに触れる機会が乏しいほど、免役の記憶は弱くなります。

日常で、水痘を発症する年齢のお子さんに接することの多いかたは、比較的免疫記憶が更新されやすい環境にあると言えるでしょう。保育士さんや、学校の先生はこれに当たるかもしれませんね。

また、ご自身や身近なご家族が帯状疱疹になって間もない場合は、やはり免疫記憶が更新されているので、帯状疱疹を再発する可能性が低いと言えます。

裏返すと、日常生活で子どもとの接点が少ないかた、帯状疱疹を身近に経験したものの、だいぶ期間が空いているかたは、帯状疱疹を発症するリスクがやや高いかもしれません。

帯状疱疹は、抗ウイルス剤の速やかな投与によって症状の軽快が得られる病気ではありますが、皆がみんなタイミングよく病院へ行けるわけでもなければ、診察に当たった医師が正確に診断できるとも限りません。

そして、『帯状疱疹後神経痛』という、帯状疱疹後に痛みが長々と続く後遺症は、中高年層の方が生じやすいと言われています。

帯状疱疹ワクチン接種費用は、各自治体に於いて金額の多寡はあるものの、50歳以上で助成が受けられる場合が多いようです。適応年齢のかたは、お住まいの自治体のホームページなどで、確認してみてはいかがでしょうか。

↓帯状疱疹ワクチン接種費用助成自治体一覧

https://hodanren.doc-net.or.jp/wp-content/uploads/2019/09/230824_hzvccn.pdf

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