キズパワーパッドなどのハイドロコロイドで、キズをぴったりと密閉保護したとき。

「キズはイイ感じに治ってきたけど…あれ?なんだか周りにアヤシイ水膨れが….!?」

という経験、ありませんか?

それ、「とびひ」かもしれません。

「とびひ」とは

ハイドロコロイドを貼ったところがとびひになった患者さん

「とびひ」は医学用語で「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」。黄色ブドウ球菌や溶連菌などによる細菌性の皮膚疾患です。膿を持った水疱が次々に出現し、破れてカサブタになるのを繰り返しつつ、周囲や離れたところにも病変が次々広がっていく(=「飛び火」する)のが特徴。

患者さんを見ていての印象では

密閉であせも、湿疹⇒痒くてひっかく⇒傷がついて細菌感染(この時点では炎症わずか)⇒密閉して細菌増殖⇒急に広がる謎の水ぶくれ&膿⇒一部つぶれてカサブタ⇒痒くてひっかく⇒さらに広がる

という経過をたどるのが一般的かなと。

この中の「一部つぶれて」のところの傷はいかにも痛々しい見た目なので、ここで良かれと思ってさらにハイドロコロイドを貼るとドツボにハマります。

とびひ、さらに倍率ドーーーン!!と広がります。

とびひ治療のポイント


とびひ治療のキモはまず、細菌感染の火消しをすること。

火消しに効果的なのは

  1.  洗う
  2.  とびひ部分は密閉しない&通気性のよいもので覆う
  3.  外用や内服で抗生剤を使用する

の3つ。

  1.  洗うことで、局所の細菌の量を減らし
  2.  通気をよくすることで細菌の増殖を抑え、かつ覆うことでひっかいて拡大するのを防ぎ
  3.  原因菌を薬でたたく

これでほとんどのとびひは速やかに鎮火可能です。

湿潤治療でとびひになったとき大事なこと

湿潤治療にとびひが合併したとき、なにより大事なのはとびひだと気づいて早めに治療をそっち方向にかじ取りすること。

しかし、この判断を一般の方に委ねるのは難しいところだろうなとも思います。


「ハイドロコロイドシールで傷の湿潤治療を始めて数日経過。傷の周りが痒くてじくじくして膿が出た。どうやらハイドロコロイドでとびひっぽい、でも、すぐに病院には行けない。」

という方は、まずハイドロコロイドをやめてみて、ガーゼのように通気性の良い保護剤にしてもOKです。

贅沢を言えば、こういう↓キズにくっつきにくいシートがおススメ


とびひになってしまったとしても

良かれと思って始めた治療でとびひになってしまったら、慌てるし、がっかりするだろうと思います。

でも

「とびひになるのは絶対イヤだから、どんなキズでも湿潤治療なんてやめておこう!」

と決めつけてしまうのはもったいない。

基本的に、とびひの炎症は皮膚の浅いレベルであることが多く、跡がいったん茶色く色素沈着したとしても、十中八九、綺麗に消えます。

また、最初にあったキズは、とびひのできる時期にはハイドロコロイドの効果でかなり治っていることも、少なくないのがこのパターンです。


湿潤治療をしていて、とびひになったとしても悲観する必要はないのです。

ぶっちゃけた話、クリニックで私が指示した治療をしていても、とびひになっちゃう患者さんは、年に何人かいらっしゃいます

そして、湿潤治療で手当てをしていないケガの患者さん(消毒+ガーゼで治療していた場合など)でも、とびひになるときはなります。

「まずは自宅で手当てしてみよう」

と考える気持ち、わたしは大事にしてほしい。それは、自分の身体と向き合うこととイコールだから。

やってみて、困った時にはプロに頼ればよいのです。