本日受診された、20代女性の患者さんのおはなし。

最近飲食店でも時々見かける、座面の下が荷物入れになったタイプの椅子、あれに昨晩親指を挟んじゃったそうです。それは、聞いただけで痛い…….。

で、爪の下で出血したっぽくて、それだけなら様子を見るつもりだったけれど、だんだん痛みが強くなってきたので病院に来てみたそうです。

処置前の写真がこちら。↓

爪が赤黒く変わっていて、周りも赤く腫れている。親指に力が加わるとかなり痛いとのこと。

診断名は「爪下血腫」。いわば「爪の下に出来た血豆」です。

爪下血腫のなおしかた

『爪』という固い組織の下に血がたまり、爪の下や周囲の組織を圧迫するため、痛みと炎症を生じます。

治療法は、きわめてシンプル。溜まった血液を外に出すこと。
この患者さんのように、爪の下に血液がとどまっている場合は、たまった血液の出口を作るため、爪に穴を開けねばなりません。

私は、フットケアやネイルのサロンで使われているのと同じマシンを使い、先の細いヤスリで徐々に削って、爪に穴を開けています。この方法だと、強い力が加わらず痛みが少ないのです。

注射針でくりくりくりくりと穴をあける方法もありますが、それなりの力で押し当てる必要があるので、腫れた状態には痛いのではないかなーと思います。

 

さて、今回の患者さん。爪を貫通すると、溜まっていた血液がぶしゅっと出てきました。
血液が排出されたとたん、爪の黒っぽさが取れて正常に近い色になりました。
(↓PCの場合、カーソルを合わせるとモザイクが取れます。スマホならクリックで。痛そうな写真が苦手な方はモザイクのままスルーでお願いします。)

 

昨日の受傷なので、ひょっとしたらまだ浸出液が、新たに出てくるかもしれません。穴の口がふさがり、爪の下にその液が溜まってしまったら、元の木阿弥です。

それを防ぐため、ナイロン糸を穴から挿入します。この糸を伝って液が外に出てくるようにしておくのです。

 

あとは、爪をプラスモイストなどの、傷口を乾かさない保護剤で覆って終了。

処置が終わった途端、指の痛みは明らかに楽になります。患者さんにも喜ばれる治療のひとつです。

爪下血腫で病院受診。さてどこへ?

さて、このような状態になった時「いったい何科を受診すればいいの?」と困る方も多いのではないでしょうか。

一般的には、整形外科がおすすめです。今回の患者さんの場合も、腫れがもう少しひどければ、骨折を疑って、整形外科の受診を勧めていたと思います。うちのクリニックは、X線検査を含む画像診断が出来ませんから。

ただし、整形外科の場合、骨折が無いなると、痛みと爪の色は、自然に引くのを待っててね、で終了となるケースも多いと思います。

ナイロン糸でドレナージするとか、プラスモイストで覆って穴の表面が乾燥しないようにするとかいった、ややマニアックなアプローチは湿潤治療の一環なので、どこでもやってるという訳ではありません。

湿潤治療的なアプローチまで求めるガッツのある患者さんは、下記のURLで、お近くの施設を検索してみてくださいませ。

夏井睦先生HP『湿潤治療をしている医師リスト(外傷の湿潤治療をしている医師)|新しい創傷治療』