てしまクリニックの特色のひとつは
キズやヤケドを
湿潤治療で治していること。
「湿潤治療」というキーワードで当院を見つけて
受診してくださる患者さんも少なくありません。
私にとってはスタンダードなこの治療法ですが
まだまだ一般的とは言えません。
ここでは、講座などでお話している湿潤治療の基本のキをお伝えします。
まず、湿潤治療で大事なことは
その1 傷を乾かさない
その2 傷を消毒しない
このふたつ。
シンプルでしょう?
湿潤治療の基本その1『傷を乾かさない』
皮膚は下の図のように「表皮」「真皮」「皮下脂肪」によって構成されています。
「傷」はこれらの皮膚の構成成分が様々な深さで欠損した状態。
傷が治るためには
周囲の皮膚や傷の底面から細胞が増殖し
表皮が再生されねばなりません。
細胞は「生き物」です。
生き物には「水分」が必要です。
カラカラに乾いた傷では
周囲の皮膚細胞は増殖することも
傷の表面を覆うべく移動することも叶いません。
それゆえに
傷が治るためには「ほどよく潤っていること」が非常に大切なのです。
これが「傷を乾かさない」理由です。
湿潤治療の基本その2『傷を消毒しない』
消毒薬の目的は、傷に付着する細菌(バイキン)を殺すこと。
どのように殺すかというと
基本的に、細菌の細胞膜と細胞質を破壊することで殺します。
ところがこの方法では
細菌の細胞と皮膚の細胞を区別することはできません。
どちらも消毒薬の攻撃対象となってしまいます。
当然のごとく、消毒薬は傷に露出した皮膚の細胞を傷つけます。
だから、傷を消毒すると痛いんですね。
そして傷の表面の皮膚細胞が壊されることにより
その再生を遅らせてしまいます。
しかも、つぎの画像をご覧ください。
[左が人体の細胞の模式図・右が細菌の細胞の模式図]
人体の細胞は細胞膜がむき出しになっているのに対し
細菌の細胞は、細胞膜が細胞壁で守られています。
ここに平等に消毒薬を振りかけるとどうなるか。
細胞壁で守られている細菌の細胞よりも
細胞壁で守られていない人体細胞のほうが
簡単にダメージを受けてしまうのです。
消毒がダメな理由、お分かりいただけましたか?
