ジョンソン&ジョンソンのキズパワーパッド™は、乾かさないで早く治す新しい傷の治療の代名詞とも言える商品です。
大手企業の気合の入ったCMが、キズの治療に対しては基本関心が薄いはずの一般消費者にまで
「近頃はそんなスグレモノがあるんだ」
と思わせた力は、掛け値なしにスゴイと思います。
ただ、発売当初のインパクトが強すぎて、未だに当時の宣伝文句の影響が残っているという困った事態にしばしば遭遇するのも事実…。
そう、その様はまるで『都市伝説』。
都市伝説その1 新しい治療=シールで密閉
『新しい傷の治療』とはシールみたいなやつで密閉する治療であり、これにより従来より3倍速く治る。
このイメージをお持ちの方、たくさんいらっしゃるのではありませんか?
キズパワーパッド™は『ハイドロコロイド』という素材を用いた創傷被覆材です。キズパワーパッド™が大ヒットしたため、現在では様々な会社がハイドロコロイド被覆材を開発し、販売しています。大手ドラッグストアではプライベートブランドで販売していることも多々。
固定のテープが不要だったり、防水性に優れていたりと、ハイドロコロイドは何かと便利な被覆材です。一方で、
- 吸収力がやや弱い
- 密閉性・粘着性が高く、周囲の皮膚のトラブルが起きやすい
- 値段が「高い」
といったデメリットを伴う被覆材でもあります。したがって、大いなる期待を胸に使ってみたものの
- 汁が漏れて汚くなった
- 周りがかゆくなった
- キズの治療ごときに高くついた
となる人が、少なくないようです。
また、キズやヤケドの患者さんが「新しい治療」を求めてわたしのクリニックを受診し、その時の状態から、ハイドロコロイドではない被覆材(もちろん湿潤環境を保てるもの)を選択した際に
「わたしのキズ、湿潤治療はできないんですね…..」
激しくションボリされる場合がたまにあります。いや、これもちゃんと湿潤治療ですよ、と説明するのですが、患者さんの思い込みを解消するのには結構な時間が必要なこともあり、割とたいへんです。
都市伝説その2 キズパワーパッド、5日間剥がすべからず
「キズパワーパッドは、5日間貼りっぱなしにせねばならない。」
という誤解、非常に多い。
この理由は、発売当初の説明にあった
『キズの様子を観察しながら、最長5日間貼り続けてよい。』
という文言にあります。ちなみに、今はこの言葉、添付文書からも削除されています。しかし、当時のインパクトが強かったせいか、巷にはこのイメージがいまだに残っているようです。
『痒くても汁が漏れても頑張って貼り続けてみたもののあまりに不安になって受診』という患者さんが少なくありません。
「5日間は剥がしちゃいけないんですよね!?」
とおっしゃるので、それは説明書を読まれたのですか?と確認してみるのですが
「え…..。いや、確か、なんか、そんな感じのことを聞いたような気が…。」
というように、言葉を濁されます。そう、皆さん基本、説明書なんて読んでないのです。だからこそ、それなりのインパクトでイメージを伝えてしまった企業側の責任は大きいと、私は考えています。
一枚当たりの値段が高いから『数日貼りっぱなしでよし』としなければと売れないだろうと、企業も思ったのかもしれません。最初にそういう戦略で行かざるを得なかった事情はさておき「説明書はもう変更しました(から読まないほうが悪い)」で後はヨロシク、ではなく、そろそろ企業自身が「コレが正しい使い方ですよ」というアナウンスをもう一度してほしいと思っています。
そんなこんなで巷に流布するキズパワーパッド都市伝説、あなたの認識は、大丈夫ですか?
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