浅い擦りキズやヤケドを、ハイドロコロイドの被覆材(代表格がキズパワーパッド®)で保護すると、大変治りが早いです。例えばこの写真↓

濃いピンク色の部分は浅いヤケドの治りたてです。しかし、よく見てみると、やけどの周りの皮膚がうっすらピンク色になっています。実はこちら「ハイドロコロイドを貼ってはがす」を繰り返したことで、キズの周りの皮膚に炎症を生じた状態

使ってみるとわかりますが、ハイドロコロイドは、皮膚への粘着がかなり強い被覆材です。キズの部分は浸出液が出てふやけるため、粘着性は失われますが、浸出液のない周囲の正常皮膚にはかなりしっかりくっつきます。この粘着力のおかげで固定用のテープは要らず、防水性にも優れているわけで、ある意味ハイドロコロイドの利点でもあります。おそらく各社とも粘着面には工夫を凝らし「くっつくけれども低刺激」を目指して商品を開発しているのでしょうが、貼ったりはがしたりを繰り返していると、さすがに皮膚の角質層は傷んで、痒みやヒリヒリ感の原因になってしまいます。なかなかうまくいかないものですね。

剥離刺激による皮膚炎は乾燥肌のひとに多い症状です。もともと乾燥により角質のバリア機能が低下していると、ダメージを受けるのも早いのでしょう。

ヒリヒリ予防にできること

さて、キズの周りの皮膚のヒリヒリ対策として、どのような方法があるでしょうか。概ね私がクリニックでおススメしているのは次の3つです。

  1. 剥がすときには「そーっと剥がす」
  2. 交換回数を減らす
  3. ワセリンなどで皮膚を保護

1.「べりっと」よりは「そーっと」のほうが、肌に加わる刺激は少なくなります。そーっと剥がす方法としては

  • 端をめくってからくるくると転がすように剥がす
  • ハイドロコロイドを肌に対して接線方向に引っ張り、少しずつ浮かして剥がす
  • めくったところに流水を当てて、ふやかしながら剥がす などの方法があります。

2.のように交換回数を減らせば、剥がす回数は当然減り、周囲の皮膚に加わるダメージも軽減されます。ただし、代謝の良いこども、汗っかきの人などが夏場にこれをやると、あせもや湿疹のリスクが上がります。貼りっぱなしにしている周りの皮膚に、かゆみや違和感が出てきていないか、注意して観察してください。逆に、ご高齢のかたはおおむね皆さん乾燥肌で、新陳代謝も遅くなっている場合が少なくないため、この方法が功を奏することが多々。

3.は万人向けの方法です。ただし、ワセリンなどで保湿すると「ハイドロコロイドが剥がれやすくなる」というデメリットもあります。ワセリンを塗るときは「うっすら」を基本にお試しください。

まずは知っておくことから

正直なところ、ハイドロコロイドのメリットを享受しつつ、キズの周りのダメ―ジ対策をするのは、日々治療に当たっている私にとっても、意外と難しいものです。ケガをして初めて自分で手当てをする必要に迫られる、一般の皆さんならなおのこと。

ただ「そうなることも、ある」と知っておけば、赤くてヒリヒリしてきたときにも、過剰に心配しなくて済むのではないでしょうか。お守り代わりの知識として、この記事を心の片隅に残してやってください。