消毒しない、乾かさないが二本柱の湿潤治療。

クリニックで、治療をしていて少なくないのが

「キズの周りが痒くなってきた」

というケース。

よく見ると『キズは湿潤治療でよくなっているのに、キズの周りの皮膚に細かく赤いブツブツがパラパラしている』ってこと、実は『湿潤治療あるある』のひとつです。

皮膚は、排泄器官でもある

このブツブツの正体、多くの場合、創傷被覆材で覆われ蒸れて生じた湿疹です。

意外と自覚は無いかもしれませんが、皮膚は立派な排泄器官でもあります。古い角質は垢として剥がれていくし、出た汗は蒸散する。ほどよくサラッとしているのが、うまく代謝している良好な状態のお肌です。

いっぽうキズが生じた部分の皮膚は、一番表面にある角質や、場合によってはそれよりも深い層が吹っ飛んでしまった状態ですから、代謝もへったくれも無いわけで、汗だの皮脂だの垢だのをまともに作れません。要するに非常事態に伴い排泄機能が停止した状態です。

さて、キズが治るために最適な「乾燥していない状態」を整えるべく創傷被覆材をあてがうと、どうなるか。

当然、キズだけではなく、キズの周りの正常な皮膚も一緒に覆われます。すると、創傷被覆材で覆われた内側の環境は、キズにとっては快適なお部屋でも、正常な皮膚にとっては窓が無くムシムシしている上「ちょ!この部屋のトイレ大丈夫っすか!?ポーン」みたいなかなり残念な物件なわけです。

時間が経てば【お部屋=創傷被覆材の中】に正常皮膚がせっせと排泄したブツがたまり、あせもができたり、細菌叢のバランスが崩れたりして、湿疹パラパラの原因になります。

「湿疹パラパラ」の解決策

さて、この問題を解決するためにはどうするか。答えは次の3つが考えられます。

  1. 正常皮膚を覆う範囲をできるだけ狭くする
  2. 吸収力の高い被覆材を選択する
  3. 交換回数を増やし、キズの周りの皮膚をそのたびに水洗いする

まず1.の方法では、創傷被覆材を傷がきちんと覆えるギリギリのサイズまで小さくします。結果、浸出液が周囲に漏れ出てしまいそうなときは、被覆材の上からガーゼやタオルや生理用ナプキンなどを当てて、着衣等の汚れを予防します。

次に2.の方法では、吸収力の高い被覆材に変更することで蒸れにくくします(被覆材の種類についてはまた近々別の記事にまとめます)。ただしこの場合、吸収力が良すぎるとキズの表面が乾燥し、治癒が遅れてしまうため、キズの顔色を伺いながら適宜被覆材の変更を検討するようにしています。観察は大事!

そして、同じ被覆材でも、交換回数を増やし、都度キズの周囲の皮膚をクリアにすれば、被覆材の中の環境は変わります。『部屋のトイレが詰まり気味でも、こまめに掃除すれば何とかなる』的な対応とでも申せましょうか。

ちょっとしたキズならば


湿潤治療に慣れた私の場合、目の前のキズとその周囲の皮膚の状態、患者さんの年齢や生活環境なども含めて思案して、最適と思われる被覆材や交換回数を選択し、指示しています。そのあたりは『プロの技』ってやつです。

でも、一般の方が「受診するかどうか微妙なレベルのキズの手当をおうちで頑張ってみよう」というときに、最適解を一発で見つける必要なんて、全然ありません。

あんまり難しいことを考えず、手に入るものでやってみる。そして、イマイチうまくいかなければ上の3つの対策をとってみる。もしくは、湿潤治療に慣れた医者のいる医療機関を受診してみる、というくらいの心づもりで十分なのではないかと思います。

湿潤治療の医師リスト⇒http://www.wound-treatment.jp/dr/doctors.htm

言うても冷静に考えれば「痒い湿疹がパラパラ出る」っていう、そこまで大したことない問題なので。