やけどしたとき、まずどうしていますか?
やけど治療のはじめの一歩。それは….『冷やすこと』。
そんなのわざわざ言われなくても知ってるし!という読者の心の声が聞こえてくるようですが、『やけどをしたらまず冷やす』があまねく一般に常識として知れ渡っているのは、非常に素晴らしいことです。
でもこの一見単純な一歩にも、知っておくと役立つTipsがございます。
『やけどを冷やす』という行為には、炎症を周囲の組織に広げず、被害を最小限に食い止める効果があります。また、冷やすことで、痛みは緩和されます。
やけど直後の痛みは激烈なことが多いので、これは大変ありがたいことです。
手足のやけどをひやすとき
やけどの場所が、手だけ、足だけ、などのときは簡単。シャワーや流しでジャーッと流水をかけて冷やせばいいですよね。ただ、たまに冬場の超絶冷たい流水に、プルプル震えながらヤケドした指をさらし続けている律儀なかたがいらっしゃいますが、個人的には、それはやりすぎなんじゃないかと感じます。滝行じゃあるまいし。
ここは、痛みを緩和するのに心地よい温度の水で冷やせば十分なのではないでしょうか。
また、いつまでも流し台の前にいる訳にもいきませんから、それなりに冷やせたら、あとは濡れたタオルを当てたり、保冷剤をハンカチやガーゼにくるんであてがっておけばよいでしょう。
それでは、比較的多量の熱い液体が、おなか、背中などに服の上からかかってしまったようなときは、どうするか。
あわてて脱がせない
そう、大事なのは『あわてて脱がさないこと』。
たっぷりと熱した湯を含んだ着衣を無理に脱がそうとすると、今度はそのアツアツの衣類で別の場所をやけどしてしまうかもしれません。
私がかつて治療した患者さんの中には、鍋をひっくり返して多量の熱湯を胸に浴びてしまった娘さんを見て、気の動転したお母さんが、かぶり式の上着を普通に脱がし、当初は無事だった顔にまでやけどを負ってしまった例もありました。
そんな時は、どうするか。
まずは、服ごとジャーッと水をかけてしまいましょう。
とりあえず服が冷えたら、落ち着いてゆっくり脱がせます。やけどの肌は痛いですから、ゆっくりあわてず。
脱がせにくいなら、いっそのこと服を切っちゃいましょう。
もったいない?そんなこと言っている場合じゃありません。切っちゃえ切っちゃえ。
ただし、慌てて切り傷まで作らないように、それだけはよろしくお願いします。
濡れた服が無事脱げて、まだ赤みや痛みが強かったら、改めて流水で冷やします。ただし、小さいお子さんの場合、体温が容易に低下するので冷やしすぎには要注意です。
頭から湯をかぶってしまったら
頭から熱いものをかぶっちゃったときはどうすればいいか、と申しますと、これは衣類と同じです。髪の毛というやつは結構水分を含む力があるので、ここに熱湯が溜まっていてよいことはありません。髪がしっかり冷えるくらいまでは、シャワー当てた方が良いでしょう。
この時も、小さなお子さんでは冷やしすぎによる体温低下に注意してくださいね。
さてさて、こんな感じで、各場所それぞれ冷やせたとして、いつまでもお水の前にいるわけにもいきません。体だったら、いつまでも裸でいるわけにもいきません。
冷やした、次のステップは
ヤケドの痛みは、空気を遮断することでも和らぎます。やけどしたところに、薄くワセリンを塗って、食品用ラップを当ててみてください。
それから、ゆったりと余裕があり、脱着のしやすい服を着(せ)ます。
比較的ひどめのやけどだと、腕や脚がむくむので、着替えるだけで一苦労、ということもあります。
これでもまだ痛がるようなら、その上から濡れタオル、氷まくらや保冷剤などでさらにやんわり冷やしてみてください。
と、ここまでたどりついたら、ご近所の、「やけど(熱傷)を湿潤治療している病院」を探してみましょう。
夏井睦先生のHP内↓こちらのサイトも便利です
熱傷の湿潤治療をしている医師リスト
良い先生に出会って、やけどがすんなり治るのが一番、ですが。残念ながら湿潤治療をしている医師を近くに見つけられず、自分で治さざるを得ない方も、少なくないと思います。
そんな、あなたのために次回は「やけどの湿潤治療 実践編」をお送りします。